シラバスを読み解いてネットワークスペシャリストに必要な知識を体系化する

ネットワークスペシャリスト試験は、なぜ合格が難しいのでしょうか。
そこで初心にかえってシラバスを読み解いてみます。
シラバスにネットワークスペシャリストの学習のヒントがつまっています。一緒にシラバスを読み解いていきましょう。
ネットワークスペシャリストに合格するためのヒントが得られます。
合格ノートの目次や方針つくりのためにも分析していきます。

 

ネットワークスペシャリストのシラバスには何が書いてあるか

 

そもそもシラバスとは

 

IPAの試験要綱・シラバス などのページには次のように説明されています。

 

シラバス(試験における知識・技能の細目)
それぞれの試験区分の人材像に照らし、必要となる知識・技能の幅と深さを体系的に整理、明確化した資料です。学習の目標とその具体的な内容を記載していますので、試験の合格を目指す際の学習指針として、また、企業、学校の教育プロセスにおける指導指針として、有効にご活用ください。

 

シラバスの目的

シラバスを読み解くことの目的は次の2つです。

  • 学習範囲を知る
  • 解答作成のヒントを得る

 

ネットワークスペシャリストのシラバスに書いてあること

そして、こちらがネットワークスペシャリスト試験のシラバスです。
ネットワークスペシャリスト シラバス

 

試験に合格するために必要な知識技能レベルが、かなり細かく記されています。
知識と技能。つまり、何を知り、どのように活かすか。
シラバスには知識だけでなく、応用まで求められていることが書かれています。

 

マインドマップ シラバスの全体像

ただ表のままだと全体像がつかめないので、全体像をマインドマップにまとめてみました。

 

ネットワークスペシャリスト-シラバス

 

ネットワークシステムを中心に7つの大項目がぶら下がっているという形であることがわかります。

 

マインドマップ 大項目ごと

さらに、大項目ごとに詳細レベルまでマインドマップで記しました。

 

 

 

 

 

1.要件定義 2.設計(1) 2.設計(2) 3.構築とテスト
ネットワークスペシャリスト-シラバス-要件定義 ネットワークスペシャリスト-シラバス-設計1 ネットワークスペシャリスト-シラバス-設計2 ネットワークスペシャリスト-シラバス-構築とテスト
4.運用・保守 5.管理 6.評価 7.個別業務システム開発のコンサルティング
ネットワークスペシャリスト-シラバス-運用保守 ネットワークスペシャリスト-シラバス-管理 ネットワークスペシャリスト-シラバス-評価 ネットワークスペシャリスト-シラバス-個別業務システム開発のコンサルティング

 

シラバスを抽象化する

マインドマップを抽象化し、ネットワークスペシャリスト試験シラバスの概念図としました。

 

ネットワークスペシャリスト-シラバス-概要図

 

1~6の大項目はそれぞれ、ネットワークシステムのライフサイクルにおける各段階の知識や技能となっています。そして、7はライフサイクルの知識や技能を個別プロジェクトに活かした応用スキルといえます。

 

言い換えれば、シラバスに書かれていることは、ネットワークシステムのライフサイクルの段階における知識や能力を活かして、個別プロジェクトをコンサルティングするネットワークエンジニアの姿そのものといえます。

 

これがネットワークスペシャリストにふさわしい姿なのです。

 

 

知識を体系化する

上記のネットワークスペシャリスト試験シラバスの概念図を踏まえて、シラバスに記載されている知識と技能を整理します。
シラバスの大項目間にまたがるような知識や重複する知識は集約し、技術分野ごとに色分けも行います。

 

段階 項目
要件定義 ネットワーク階層&プロトコル OSI参照モデル、対応するプロトコル
1.要件定義 トポロジ フルメッシュ型、パーシャルメッシュ型、ハブアンドスポーク型
1.要件定義 アドレス体系、設計 IPアドレス、サブネットマスク、デフォルトゲートウェイ
1.要件定義 不正侵入検知、防御ツール IDS、IPS
1.要件定義 信頼性 平均故障間隔の向上
1.要件定義 情報収集の手法、手順、実施 利用者要求の主要情報源を特定
1.要件定義 調査の目標とスコープの設定 収集すべき情報の範囲と量を特定、個人やグループからの回答を分析
1.要件定義 要求定義 データを選択して要求を特定、要求を組み立て、システム要求として反映する能力、要求を裏付ける資料の作成
1.要件定義 制約 相互依存性の発見、制約事項を作成
1.要件定義 リスク分析技法 業務システムの動作特性やシステム構成からボトルネックを推定
1.要件定義 トラフィック分析ツール トラフィックの測定および評価
1.要件定義 資源の利用可能性、プロジェクト納期 既存システムからの更改、作業工数、計画立案
1.要件定義 性能要求事項の識別 利用者の期待値を特定
1.要件定義 レビューの進め方 情報の正確性や一貫性を分析、矛盾する要求の認識、解決策の提示
1.要件定義 ネットワークシステムの国内・国際基準に関する知識
2.設計 電子メール、ファイル転送、Web技術、コンテンツ配信 メールサーバー、SMTP、FTP、HTTP、動画配信
2.設計 クラウドコンピューティングエッジコンピューティング SaaS、PaaS、IaaS、IoT、M2M
2.設計 通信方式 TCP、IP、SIP
2.設計 トラフィックのタイプ負荷、スループット、待ち行列 ユニキャスト、マルチキャスト、ブロードキャスト、TCPやUDPのスループット予測と測定、待ち行列を利用したWebシステムの設計
2.設計 リモートアクセス、モバイルアクセス SSL-VPN、IPsec-VPN、画面転送方式
2.設計 無線LAN AP、通信規格
2.設計 ネットワーク仮想化 SDN、SD-WAN、NFV
2.設計 高可用性(HA) FWの冗長化
2.設計 セキュリティホール コンピュータの欠陥、脆弱性
2.設計 安全なネットワーク VPN
2.設計 機密性、完全性、可用性
2.設計 ネットワーク技術や機器のインプリメンテーション(実行)
2.設計 導入テスト
2.設計 アーキテクチャ設計技法、方法論
2.設計 ネットワーク関連法規
2.設計 経済性 売上と、導入コストおよび運用保守コストのトレードオフ
2.設計 セキュアなネットワークシステムの設計 認証、暗号化、アクセス制御
2.設計 関係者や作業グループに関する知識
2.設計 変更手続に関する知識
2.設計 セキュリティに関する組織上の問題に関する知識
2.設計 インテグレーションの方法論 垂直統合、水平統合、共通データ・フォーマット、API、オーケストレーション、DX
2.設計 利用者への影響
2.設計 設計レビュー
3.構築とテスト ソフトウェアの導入と構成手順
3.構築とテスト 機器、配線、ネットワーク・ソフトウェアやネットワーク・サービスの手配
3.構築とテスト リスク考察、代替案の作成
3.構築とテスト アクションプランの作成 問題の原因を分析し提案する
3.構築とテスト 関係者間の問題調整
3.構築とテスト 業務プロセスフローを詳細に作成
3.構築とテスト データコンバージョンの問題と解決手順
3.構築とテスト 互換性の問題と解決手順
3.構築とテスト 継続的なネットワーク改善戦略と改善ツールの使用
3.構築とテスト 適切な手順に準拠する能力
3.構築とテスト 適時に課題を解決する能力
3.構築とテスト 複数のスケジュールの組み立て、マイルストーンの設定、管理、調整
3.構築とテスト 生産性への影響を図示、調整
3.構築とテスト テストツールとその手順
3.構築とテスト エラー発生時の性能への影響、エラーとネットワークシステムの機能を関連付ける能力
3.構築とテスト テスト機器や構成を決定する能力
3.構築とテスト データを分析する力 テスト結果の分析と評価
3.構築とテスト ビジネスの状況に合わせた適切なテスト計画
3.構築とテスト ネットワークシステムの限界を認識する能力
3.構築とテスト テスト実行の方法論と手順
3.構築とテスト テスト環境における製品と相互関係に関する知識
3.構築とテスト テスト実施の継続的な改善プロセス 創造的な解決技法、新しい計画やアプローチを組み立てる
4.運用・保守 セキュリティツール
4.運用・保守 利用者のネットワーク設定
4.運用・保守 保守ツールとその手順
4.運用・保守 ネットワークシステムの運用手順
4.運用・保守 バックアップメディア
4.運用・保守 バックアップおよび復旧の手順
4.運用・保守 バックアップのためのサービスプロバイダとの役割分担
4.運用・保守 組織の方針とシステムの運用
4.運用・保守 保守 文書化、アカウントの設定やルールの適用、利用者の環境設定、保守手順
4.運用・保守 不具合の重要度を把握
4.運用・保守 保守および更新の実行や手順
4.運用・保守 どのような時に更新が必要となるか
4.運用・保守 構成台帳のデータベース化
4.運用・保守 調達や投資管理に対する手順
4.運用・保守 構成管理の知識
4.運用・保守 構成要素管理ツール、台帳データベースの知識
5.管理 監視ツールの使用と監視データの収集・分析
5.管理 AIによるビッグデータ分析
5.管理 IoTデバイスの管理と通信方式 MQTT
5.管理 トラフィック状況に関する知識、レスポンスに関する知識 スパイクアクセス、バーストトラフィック、ターンアラウンドタイム
5.管理 ベンチマークテスト
5.管理 性能の偏りを診断する能力
5.管理 セキュリティ侵害を受けたときの対処
5.管理 対策パッチ、コンピュータウイルス
5.管理 組織の情報セキュリティポリシと手順および文書化
5.管理 セキュリティ監視の手順、侵入時の適切な対応
6.評価 監視プロセスと手順
6.評価 評価手順および報告手順
6.評価 組織のネットワーク資源とその制限
6.評価 組織における文書化の標準および配布手順
6.評価 トラフィック予測
6.評価 モデリングおよびシミュレーションツールの利用
6.評価 アクションプランの評価、改善点の特定と報告
6.評価 システムの改善提案および目標や制約を分析する能力
6.評価 新製品や最新の技術動向の把握、他組織のネットワークシステムの動向を把握

 

緑:階層ごとの機器の動作とプロトコル
黄色:性能(信頼性、高可用性)
青:セキュリティ
ピンク:仮想化(クラウド)
灰色:エッジコンピューティング(IoT、M2M)
オレンジ:監視
赤:ライフサイクルの各段階における固有知識や技能

 

 

中核知識(ネットワーク)

色分けした分野のうち、赤以外をネットワークスペシャリストの中核知識と定義します。
ネットワークスペシャリストを受験する上で必須の知識です。

 

周辺知識(ライフサイクル)

色分けした分野のうち、赤をネットワークスペシャリストの周辺知識と定義します。
ネットワークスペシャリストを受験する上で、問題を読み解く上で補助となる知識や解答のヒントとなる知識です。

 

これらをネットワークスペシャリストの知識体系図としてまとめました。

 

ネットワークスペシャリスト知識体系図

 

 

まとめ

ネットワークスペシャリストの知識体系図を作ったうえでのまとめです。

 

ネットワークスペシャリストの勉強の仕方

ネットワークの中核知識は、ネットワークスペシャリストの参考書も多く掲載されていますし、多くの人が勉強に時間を割いていると思います。
しかし、それでもネットワークスペシャリストが難しく感じるのは、周辺知識が足りないからではないでしょうか。

 

午後問題はネットワークシステムのライフサイクルの中の様々な場面を想定した問題です。
問題の背景を理解するには、周辺知識が必要です。
また、周辺知識を身につけることで、機器やプロトロル単体の知識だけでは解きにくい、様々な問題に対応できるようになるでしょう。
中核知識だけでなく、周辺知識もしっかり勉強することで、午後問題の点数を取りやすくなります。

 

まとめると、
「ネットワークスペシャリストに合格するには、ネットワーク技術の知識だけでなく、ネットワークシステムのライフサイクルの知識も必要です」
ということです。

 

現場感覚がないと合格は難しい

ネットワークスペシャリストのシラバスを読み解くと、「知識をどのような場面で活かすか」「知識を具体的にどのように活かすか」といった現場感覚を求められていることがわかります。
ネットワーク従事者でない方は、実際にネットワーク機器に触れることは難しいかもしれません。
自宅のネットワーク構成図を書いてみたり、ネットワークシミュレーターを使って架空のシステムを構築し実践してみたりして、現場感覚を養うのも良いでしょう。

 

合格ノートの方針

合格ノートの方針としては、中核知識を中心としつつ、周辺知識(ライフサイクルの知識)も解説していきます。
また、ネットワークスペシャリストの知識体系図をもって、合格ノートの目次を大要とします。
中核のネットワーク技術をどのような場面でどのように利用するか。それを周辺知識として理解できるようにしていきます。
中核知識を解説しながら、折に触れて、周辺知識の視点で伝えていきます。